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ジュエリーはこうして生まれる~ロストワックス技法による手づくりの魅力~

ジュエリーはこうして生まれる~ロストワックス技法による手づくりの魅力~


ジュエリーがどのように作られているか、ご存じですか? 私たち「Give Me a Wing」では、古代から受け継がれてきた伝統的な技法「ロストワックス・キャスティング」を用いて、世界に一つだけのジュエリーを生み出しています。この記事では、ジュエリー制作の全工程を、初心者の方にもわかりやすく解説します。モノづくりの魅力や技法の奥深さを、ぜひご体感ください

◆ロストワックス技法とは? 歴史と進化

「ロストワックス・キャスティング(Lost-wax casting)」は、古代メソポタミアで青銅器を鋳造する際に発明されたとされる技法で、仏教の伝来とともに日本に伝わり、銅鐸や仏像など多くの美術工芸品に用いられてきました。
時代が進むにつれ、この技法は産業革命後の工業製品の鋳造にも応用され、歯科技工や航空機のパーツにも使われるようになります。そして現代では、ジュエリー制作における主要な技法の一つとして定着しています。
ジュエリー市場に出回る作品の約70〜80%が、このロストワックス技法によって生み出されたもの。自由度が高く、複雑なデザインも可能なため、唯一無二の作品づくりに最適な技法です。

◆ジュエリー制作の2つの技法

ジュエリーの制作方法は大きく2種類に分けられます。
• 彫金(ちょうきん)技法:金属(シルバー、ゴールド、プラチナなど)を直接切削・加工して形を作る。
• ロストワックス技法:ロウ材(ワックス)で形を作り、鋳造して金属化する。
私たちGive Me a Wingでは、後者のロストワックス技法を採用しています。なぜなら、以下のような特徴があるからです:
• 彫刻的な立体表現に強い
• 複雑な装飾やテクスチャーが可能
• 初心者でもチャレンジしやすい
• オリジナリティのあるデザインに対応できる

◆ロストワックスには2つのアプローチ

ワックスには彫刻に向いているハードワックス、ビルドアップに向いているインジェクションワックス、柔らかいシートワックス、線状になっているワイヤーワックスなどいろいろあります。

① カービング法

硬い「ハードワックス」を削って形を作る方法です。彫刻のようにナイフやヤスリで少しずつ整えていきます。線のシャープさや滑らかさにこだわるデザインに向いています。

② ビルドアップ法(当ブランドで採用)

柔らかいワックスを溶かして盛り上げたり、削ったりして立体的な形を作ります。感覚的で自由度が高く、細かな模様も追加しやすいため、私たちの制作スタイルと相性が良い方法です。
こんな制作スタイルです
• デザイン画を描かず、いきなりワックスで形を作ることが多い
• 石座(宝石を留める台座)も自由自在に制作可能
• 立体のバランスや空間構成を重視しながら制作

◆ワックスの種類と特徴

ワックスにはいくつかの種類があり、用途に応じて使い分けます。
• ハードワックス:カービングに適した硬質素材
• インジェクションワックス:型に注入して複製品を作る際に使用
• シートワックス:薄くて柔らかく、模様や表面装飾に最適
• ワイヤーワックス:線状で、装飾的な曲線やパーツ制作に便利
私たちは、複数の硬さのワックスを混ぜたり、部位ごとに使い分けたりして、最適な表現を追求します。

◆ビルドアップの実際:制作のステップ

1 ワックスを溶かす
 以前はアルコールランプを使用していましたが、現在はバーナーやガスコンロで素早く溶かします。
2 形を作る
 土台を作った後、盛ったり削ったりして造形。模様やディテールは柔らかいワックスとワックスペンで追加。
3 工具の活用
 ワックスペンは温度調節が可能で、細かな作業が得意。盛り足しや接着も自在です。
4 コフィン型ペンダントの例
 硬いワックスを棺桶型に削り、縁を作り、柔らかいワックスで模様を描くといった、異素材ミックスの例もあります。

◆ワックスの魅力と対応力

• 立体物が得意:例えば、ミニチュアの猫や、薔薇の花と蕾の繊細な構成も可能。
• 失敗も直せる:割れても簡単に修復可能。彫刻素材として非常に扱いやすいです。
• 微調整が簡単:60度程度のお湯に入れて曲げることで柔らかくし、形を整えることもできます。

◆鋳造(キャスト)の工程へ

1 ワックス原型のセッティング
 金属製のリング状の枠に立て、水で溶いた石膏(埋没材)で固めます。
2 焼成(電気炉へ)
 乾燥後、電気炉で焼成。ワックスが蒸発して空洞ができ、これが金属の流れ込む“型”になります。
3 地金を鋳造
 ワックスの重量に応じて、使用する地金の量を計算:
 - シルバー:×10倍
 - ゴールド:×15倍
 - プラチナ:×20倍
 遠心鋳造で一気に流し込み、急冷して取り出します。

◆鋳造後の仕上げ作業

ここからが、実は一番手間がかかる工程です。
• 酸洗い:硫酸で黒ずみを除去して白く仕上げる
• ガラ研磨機で荒研磨
• リューター仕上げ:番手を変えて滑らかに
• ス穴の補修:ロータリーベラで微細な穴を埋める
• ロウ付け:大きな穴やパーツ接続部分は銀ロウで接合
• 最終仕上げ(大バフ):鏡のような美しい輝きに!

◆一点ものと量産品の違い

• 一点もの:この時点で完成。石留めや刻印を施して仕上げ。
• 量産品:ゴム型を作って複製します。

ゴム型の作り方

1 アルミ枠に原型を入れ、シリコンゴムで挟んでホットプレス
2 メスで切り開いて原型を取り出すと、インジェクション対応の「複製型」になります
3 この型にワックスを流し込み、また鋳造〜仕上げへ
※ゴム型も若干縮むため、サイズ補正は必須です。

◆まとめ:ジュエリーづくりの奥深さ

ロストワックス技法は、手作りならではの温もりと精密さを兼ね備えた、ジュエリー制作の極みです。立体的な表現や、自由なデザインの再現、そして修復のしやすさから、初心者からプロまで幅広く活用されています。
私たち「Give Me a Wing」では、手間ひまかけたこの制作工程を通じて、「身に着けるアート」としてのジュエリーをお届けしています。
ジュエリーや石のことを知れば知るほど、どんどん世界が広がっていきます。今後も、制作の裏側や石の魅力など、たくさん発信していきますので、ぜひお楽しみに!

Give Me a Wing 関岡麻由巳

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